このページでは酒にまつわる話や、いろんなエピソードなど書き綴っていきたいと思います。
   
   
 
 VOL24:蒸留酒の遥かなる旅路 (H21.10.16) 

 日本までの蒸留酒伝来のルート
  焼酎が日本で飲まれるようになるまでには、長い移動と長い年月を要しました。



世界最古の蒸留酒は?
   

 世界最古の酒はおよそ6000年前に西アジアで造られたブドウ酒であると言われています。もちろんその頃の酒は醸造酒であり、焼酎のような蒸留酒は蒸留機が発明されてから約2000年ほど後になります。蒸留機は紀元前3000年頃、古代文明の発祥の地メソポタミアで発明されたものですが、その頃は酒を蒸留するためのものではなく、植物を原料とした精油や香油を作るためなどに用いられていました。最も古い蒸留酒として紀元前750年に古代アビシニア(現エチオピア)で、ビールをもとに造られた蒸留酒が存在したほか、インドでは紀元前800年頃に米や砂糖を発行させて造った酒を蒸留し、アルコール濃度の高い蒸留酒を造っていたという記録が残っています。いずれにしろ紀元前3000年頃西アジアで発明された蒸留機は、かなりの時間をかけて東西に普及していきました。西方に広がったものはワインやビール等の醸造酒などとともに、地中海沿岸からヨーロッパに伝わり、ウイスキーやブランデーなどの蒸留酒が生まれたとされています。一方、東方へ広がっていったものはインドを経て中国に入り焼酎の原型が作られていったようです。ヨーロッパで不老長寿の秘薬としてビールの蒸留酒が造られたのが12世紀後半の事であり、スコットランドにウイスキーが普及したのは15世紀から17世紀にかけての事です。またワインから造られるコニャックブラデーが造りはじめられたのは17世紀前半の事です。

日本へ初上陸(焼酎伝来)

 蒸留技術が発明されて以来、約4500年の歳月を費やした

 日本に蒸留酒が入ってきたのは西暦1515年(永正12年)、島津藩へ琉球の使者が献上した琉球焼酎(泡盛)、南蛮国酒、唐酒(中国酒)が最初だと言われています。ちなみに琉球に伝わったのが西暦1477頃シャム(旧タイ王国)から伝わったと言われています。1569年頃になると、琉球はタイとの交流が衰え、薩摩との交流が行われるようになります。日本の清酒醸造で使われていたバラ麹が移入されるようになり、1609年の島津支配により、日本式酒造技術が導入されるようになりましたが、その技術の確立には約100年にも及ぶ長い年月が費やされました。

黄麹から黒麹への転換

 その土地の自然と人々が新しい酒を生み出す

  西暦1719年頃になると、製麹には日本固有の黄麹カビ(アスペルギルス・オリゼー)が用いられるようになりました。しかし、琉球のような高温多湿な地域で黄麹カビを用いて泡盛を造ると、もろみが腐ってしまうという大きな欠点がありました。そして長い時間を経て技術革新が進み、黄麹カビに変わり黒い胞子を持つ黒麹菌(アスペルギルス・ニゲル)系統のものが使われるようになりました。この黒麹は高温多湿による腐食には強いものの、使用する際、人の皮膚などが黒く汚れてしまうという欠点があります。近年では泡盛だけではなく焼酎造りにも使用されています。麹菌の酒類によって味や風味が違うので、焼酎の味も多様化しています。

終わり無き旅

 世界中に人々が存在する限り、進化は終わらない

 日本の焼酎のルーツは、紀元前3000年の蒸留機の発明に始まり、前300年頃にインド・インドシナでアラック酒が造られ、それが元の時代の中国で火酒(焼酎)が生み出され、そこから南下しタイでラオロン酒を生み、さらに旅を続け琉球の泡盛が誕生し、やがて日本へ伝来という具合に、壮大な年月をかけて酒も旅をしてきました。焼酎の歴史は遥かなる夢と浪漫の歴史と言えるでしょう。
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